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基調講演 経済評論家 長谷川 慶太郎 「情報化社会とまちづくり」
経済評論家 長谷川 慶太郎

 皆さん、こんにちは。

 

 ご存じの通り、いま世界全体、大きな変化あるいは激動を経験していると申し上げてよいでしょう。日本ももちろん例外ではありません。そのなかで非常に大きいポイントは、世界全体にわたって急速に情報化社会が生まれかつ発展しているという点でございます。 実を申し上げますと、ちょうどいまから数えますと約13年ほど前でございますが、私は1985年に『情報化社会の本当の読み方』という著作を出しました。この協議会ができて2年後でございます。そのなかではっきり申し上げ て、これからの時代は情報化社会である、しかもこの情報化社会の流れがいっそう強まっていくなかで、それぞれ世界全体の人類共通した課題として、経済活動が積極的に展開されるだけではない。経済活動を成功しようとするならば、情報化社会という要因を抜きにはできないと申し上げておりました。

 また、この著作のなかで、実はその当時、まだ世界全体の情勢をいちばん基本としておりました冷たい戦争は、あまり遠くない時期に西側陣営の完全な勝利、ソ連を中心とした東側が完全に敗北すると、そういうことをこの著作のなかで明確に指摘、予測しておりました。

 

 ご存じの通りでございます。その理由は、東側陣営には、情報化社会に参入する、参加する資格が欠ける。情報化社会に参加しようといたしましたら、三つの条件が必要でございます。その第1は、国民に広い範囲に渡る情報入手の自由を保障する。つまり、誰でも必要と思った時、また手に入れたいと望んだ時、所定の料金さえ支払うならどんな情報でやっても自由に入手できる。その情報を入手するチャンネルとして、マスコミあるいはまたインターネットなど、情報のネットワークがフルに活用できなければならない、これが第1であります。

 

 第2の条件は政治の民主主義、それぞれ自分の望む政治勢力あるいは政党を政権につけるために自由に投票ができる。どんな勢力もその自由な選択を妨げることはできない。したがって政治の決定権を国民が自分自身に持っているということが必要でございます。言い換えれば、一党独裁体制のもとでは情報化社会に参入することができません。

 

 三つ目の条件は、自由競争あるいは市場経済が支配しているということでございます。言い換えれば、情報化社会に参入しようといたしましても、自由な経済活動が可能でなければ、いくら情報を入手するためのネットワークを整備しようといたしましてもそれは不可能であるだけではない。端的に申し上げて、自由な経済活動が誰にも許されているという環境のもとでなければ情報化社会は決して定着も発展もしないということだとお考えいただいてよいでしょう。

 

 繰り返します。情報入手の自由、政治の自由、市場経済、自由経済体制の確立、この三つの条件を備えていなければ情報化社会を定着させようなどということは不可能と申し上げてよいでしょう。

 

 したがって、東西の冷たい戦争のなかで、東側の陣営に属する国は、情報化社会に入れない。ということは、経済活動の効率においても、さらにまた技術の進歩発展においても、著しく西側に立ち遅れて、結果として冷たい戦争で東側陣営が負ける、完全に敗北する。戦争に負けましたら、必ず政治体制が崩壊いたします。これは20世紀全体の歴史の教訓の一つでございます。

 

 大規模な戦争をやった国において、もし戦争に負けましたら、必ずと申し上げてよいでしょう。戦争をはじめた責任をはじめた時の政治体制に国民が問う。その結果、国民の信頼あるいは信任を失って、戦争をはじめた時の政治体制は敗戦とともに必ず崩壊、解体、消滅する。これがいま皆様方、眼前に展開している、例えばソ連邦の崩壊、その後継国家としてのロシア連邦の成立と申し上げてよいでしょう。

 

 東ヨーロッパにも、いくつもあった共産党の一党独裁体制を取っている国が、全部、共産党の一党独裁体制が解体、崩壊、消滅いたしました。

 

 それとともに、旧ソ連邦でも、さらにまた東ヨーロッパの共産党の一党独裁体制が支配していた、俗にいう共産圏の諸国でも情報化社会が急速に普及し、発展し成長していると申し上げてよいでしょう。

 

 ところで情報化と申しますのは二つございます。それは一言で申し上げるならば、売手の側の情報化、その一方で買手の側にも情報化がございます。この二つは違う。どこが違うか。売手の側の情報化を促進し、拡大し、強化していく原動力は、物価の下落、表現をかえましたら、デフレでございます。他方、買手の側、もっと端的に申し上げるならば、消費者の情報化を促すものは規制の緩和あるいはまたいろいろな行政の措置あるいはまた行政組織そのものの解体あるいは規制の緩和そのものであると申し上げてよいでしょう。

 

 と申しますのも、物価がどんどん下がってまいります。しかも継続的に物価が絶えず下がっていくということになりましたら、買手は楽でございます。なんにもしないで黙って座って、買い控えてさえおれば、いくらでも安くなった価格でより優れた品質と性能の商品とサービスをいくらでも手にすることかできる。つまり、黙って座って買い控えてさえおれば、よりよいかつまた質の優れた製品をより安い価格で手にすることができる。楽でございます。

 

 その一方で、売手は大変であります。買手が一体どういう品物を御買上いただけるのか、また一体、どういう条件を備えた商品とサービスならば買手に選んでいただけるのか、その見通しがつきません。また、同時に、万一、つくった品物に売れ残りができましたら、今度はそれを処分する方法がありません。右肩上がりに物価が絶えず上昇しているインフレ時代でありましたら、売れ残りができてもなんの困ることはありません。いずれいくらか値引きさえすれば買手が飛びついて買ってくれる。すなわち値引き販売は、インフレ時代には最も有効な在庫処分の方法である。今度は逆に、物価があらゆる価格が右肩下がりに絶えず下がっていくデフレ時代になれば、そういう値引き販売をいたしましても買手は買ってくれるという保証にならない。したがって売手といたしましては、売手といたしましては、一品たりとも売れ残りをつくってはいけない。たった一つであっても売れ残りをつくったら、その売れ残りの在庫を処分する方法がない。となれば、売手は買手が、しかも気まぐれで有効にあるいは気象条件にあるいはまたその時々の気分次第によってどんどん買う対象の品物とサービスをかえていこうとする、いわば買手の気まぐれに振り回されるという事態が起こる。

 

 したがって、デフレ時代において企業の経営に成功しようといたしましたら、買手の動向を示す情報をできるだけたくさん詳しく、同時にできるだけ早く入手するための情報のネットワークを組織して対応する以外に方法はない。したがって売手は販売の末端から、企業の経営の中心部に至る情報のネットワークを極力整備して、できるだけ早く、できるだけ詳しく、同時にまたできるだけ正確な情報をできるだけたくさん、経営の中枢に集めるという努力を必要といたします。これが売手の情報化であります。

 

 その一方で買手、すなわち消費者にとってみれば、黙って座ってさえおれば、自分の気にいった、より性能の優れた質のいい商品とサービスをより安い価格でいつでも手にすることができる。したがってどこにどういうものを売っているかという情報に、あまり関心を持つ必要がありません。むしろ、その逆に、規制の緩和によって、例えば公共料金がどんどん自由化されるという時代を迎えれば、今度は、よりよい生活をより安いコストで快適に維持していくために、どうしても情報を必要といたします。

 

 例えばの例で申し上げましょう。皆様方私はおそらくあまり遠くない時期に電力料金は変動制に移行すると思っております。変動制と申し上げるのは、電力の1kw時の料金を季節によって、曜日によって、また時間帯によって変更するというシステムでございます。いまならば通常料金と深夜料金という二段階制。それが、おそらく数十段階、数百段階に料金の基準がかわるという時代があまり遠くない時期に必ずまいります。それをもたらすものは何かと申し上げれば、まず、コンピュータの普及であります。皆様方のご家庭にあります電力のメーター、あれに全部小型のコンピュータをつけておきましたら、何曜日の何時から何時まで、何kwの電力を使ったかを正確に記録することが可能である。その時間帯の料金が変動いたしましても、正確な電力料金の計算は決して不可能ではありません。

 

 また、そうして計算された正確な電力料金を電話線を使って、ホストコンピュータに登録しておけば、毎月月末になれば、その月にお使いになった電力の量と同時にまた時間帯を記録して、それからまた正確な電力料金をいくらでも計算することが可能でございます。

 

 となりますと、どういうことが起こるか。電力料金が電力のたくさん必要な時間あるいはまた季節、曜日、そのまた逆、その間に電力料金に大きな幅が生ずるということであります。

 

 皆様方、ご存じですか。日本の例で申し上げるならば、毎年最も大量に電力を使う日が決まっております。これは本当でございます。いつかと申し上げるならば、8月、高校野球の決勝戦の日であります。この日に夏休みをお取りになって、朝からガンガン、クーラーをつけて、テレビの前に釘付けになっている方々がいかに多いか。この日がいちばんたくさん電力が使われます。

 

 逆に、電力の消費量がいちばん少ない日、これも決まっております。お正月の2日でございます。工場がみんな休んでいる。事務所も商店も役所も学校もみんなお休みでありますから、電力を使う人達がいない。実は、電力消費量のピークとボトムとの開きは、1対4、すなわち甲子園の決勝戦の日は、お正月2日の電力消費量の4倍使う。これにスライドして電力料金を変更すれば、甲子園の決勝戦の日の電力料金はお正月2日の電力料金の4倍になるでしょう。となりましたら、電力をたくさん使う産業、例えば電気炉で鋼をつくる電炉という産業があります。電炉製鋼をやっている会社があります。ここでは、甲子園の決勝戦の日は、全社休み。(笑声)かわりにお正月の2日に全員出勤してフル操業する。(笑声)

 

 皆様方お笑いになるけれども、現実にそれに近い状態がすでにできております。ご案内かもしれません。夏になりましたら、先程申し上げた深夜料金をもう少し拡げて、午後10時以降、朝6時までの電力料金は特別料金制をとっております。したがって、電炉製鋼のメーカーでは、この夏になって特別料金制が導入されるシーズンになりましたら、出勤時間がかわります。夜9時でございます。夜9時が定時になる。そして朝6時までフルで操業いたします。そういたしましたら、電力料金の消費価格のうんと下がる。となりますと、その分だけコストが安くなると申し上げてよいでしょう。すでにやっているのでございます。これがもっと大規模になるでしょう。お正月の2日に出勤すれば、もちろんのこと、いまの制度では休日出勤でありますから、給料に割増がつきます。にもかかわらず、電力料金の4分の1になるとすれば、この日にフル操業するほうがずっとプラスである。

 

 となりましたら、現在の制度、システムでは、1対4開いているものが、実はお正月2日と甲子園の決勝戦の日の電力料金の差、電力の使用量の差が、4対1から3対1、2対1にかわるかもしれません。それにスライドして電力料金を下げるということはお正月2日の電力料金に比べて甲子園の決勝戦の日の電力料金の水準が下がっていく。その分だけ、電力業にとって最も大切な設備投資の金額が減っていく。電力というものはいつも供給義務がございます。すなわち使うだけの電力を電力会社は必ず供給しなければなりません。その電力のいちばんたくさん使われる日の需要に合わせて、発電所をつくらなければいけません。変電所を整備しなければなりません。その甲子園の決勝戦の日の電力の消費量が減っていけば、その分だけ設備投資が大幅に削減できると申し上げてよいでしょう。となれば、償却の負担、さらにまた設備資金を調達するのに必要な借入金の負担、したがって金利の支払いがこういうものが減っていく。正確な表現を使えば、資本費の負担が大幅に削減されると申し上げてよいでしょう。

 

 実を申し上げますと、日本の電力料金のコスト構成を見ておりますと、燃料費そのものはわずか3分の1しかありません。残り3分の2のうちほとんど半分、すなわち3分の1がこの資本費の負担であって、これが大幅に削減できるということになりましたら、電力料金そのものの水準を大幅に引き下げることが可能になる。つまり、電力料金を安くしようとすれば、変動料金制を導入することが最大の決め手と申し上げてよいでしょう。

 

 これが実は、右肩下がりの価格の下落が続くという大きな流れのなかでは必ず実現せざるを得ない、またするに違いありません。となりましたら皆様方、1日をとってもそうであります。電力の消費量がいちばん少ない時間帯は、ご存じでしょう、深夜であります。夜11時以降、翌朝の6時まで、それがいちばん電力の消費量が減る。逆に増えているのは、いちばんたくさん電力を使うのは昼間でございます。しかも毎日、毎日、1時間刻みで電力料金を変更できるというシステムを導入いたしました。例えば皆様方、洗濯物を乾燥させる乾燥機、あるいはまた最近も使うようになりましたが、クーラーに必要な冷たさ、つまりクールネシス、これを深夜氷をつくっておいて、その氷を昼間の暑さでとかすことによって冷たさをつくるというシステム、こういうものが次々生まれてまいります。そういう乾燥あるいは大量の氷をつくって低温を、つまり冷たさを保存しようとするそれに必要な機械。それの運転をいつするか。

 

 例えばきょうは、意外に電力の消費量が高水準であって、夜10時から11時にかけての時間帯は昼間の、例えば4時から5時までの時間帯の電力の消費量に比べて、あまり落ち込みがない。例えば夏の暑さのひどい日などそうであります。となりましたら、電力の消費量の減っている時間、それは電力料金が下がるのでありますが、その下がり方が少ないとなりましたら、その情報をご家庭の主婦の方は、それこそインターネットの端末を通じて正確に予測することが可能であるとすれば、たぶんそうなりましょう。

 

 ご家庭の主婦の方が、こうしたたくさんの電力を運転上必要とする機器をいつ運転開始の予約をするか。皆様方、いま、どんな機械にも、例えば洗濯機をとってもそうであります。全部予約のタイマーがついている。そのタイマーを一体何時から動かすようにセットすればよいか。そのために必要な情報を、それこそインターネットを通じて正確に同時に敏速に入手するとともに、タイマーのセット時間をどんどんかえていく。となりましたら、ご案内の通り、電力の消費量に比べて電力料金の負担が著しく軽くなる。つまり、家庭生活を快適に高い水準で維持していくにもかかわらず、経済的な負担を軽減することができる、これはコンピュータの、すなわちインターネットの端末をご家庭の主婦の方がうまく運転し、そこで入った情報を活用することによって生まれてくるに違いない。これが私の申し上げている買手の情報化、極論すれば消費者の情報化と申し上げてよいでしょう。

 

 同じことが交通料金にもいえます。飛行機に乗る、新幹線に乗る、全部料金が季節によって、曜日によって、時間帯によってかわる。しかも先物の予約ができる。つまり、先物と申しますのは、1年先、6ヵ月先、3ヵ月先、あるいは1週間先、その時の料金をいまから予約してセットしておる。これを先物の予約と申します。先物の予約が長ければ長いほど、すなわち1年先であれば6ヵ月先より、3ヵ月先よりディスカウントの幅が広がっていく、これは当然でございます。飛行機会社にしても、JRにいたしましても、お客様がいつごろどの列車あるいはどの便にお乗りになると、それが早いうちから正確に判断されあるいは予約が取れれば取れるほど、経営は安定いたします。その経営の安定の分だけ、お客様に料金を安くするという形で利益を還元するに違いない。すでにアメリカなどそうであります。

 

 例えばことしの夏、ものすごく観光旅行が増えました。アメリカの国内線のどの便も満席に次ぐ満席でございます。その時に、例えばことしの8月にお乗りになる方が、ことしの2月に6ヵ月先に料金を予約しておいたその予約の額と金額、その当日、飛び込みで空席待ちで、その日の便に乗ろうとされる方との間に、航空料金の同じ路線の航空料金の差がどれくらいできたか。1対4。つまり、当日の空席待ちなら6ヵ月前に予約した方の4倍の料金が取られました。本当でございます。

 

 先般も私のところにまいりましたある大銀行のニューヨークの支店の幹部がぼやいておりました。つい先週のこと、ニューヨークからシカゴにどうしてもその日のうちにいかなければいけない。ケネディへ飛び込んで空席がないか。たまたまあったそうであります。ところがシカゴまでいって帰る、その往復の運賃が3000ドル取られた。3000ドルです。その時の為替相場で申し上げるならば40万円です。私はびっくりいたしました。「おい、君、それはニューヨークから成田へ来る便より高いじゃないか」と申しましたら、「そうです。5割高でした」と。それは、大変にお客が増えて、どんどん空席が先から予約で詰まっていく。その結果、あまりもの、というより、わずかなその余った席をたくさんのお客が取り合いますから、どんどん、どんどん料金が上がっていく。それでも仕事上やむを得ず乗らなければならないビジネスマンは、その高い料金でも我慢して乗っている。

 

 成田へくる予約の料金が2000ドルであるのに、ニューヨークからシカゴまで往復すれば、これが3000ドルも取られた。これは本当のことを申し上げているのです。こういう時代が参りました。

 

 となりましたら、年金生活でいま前向きの仕事をなすっていらっしゃらない、ご引退になった高齢者の方が、どこかいまから北海道へ旅行しようとお考えになったら、冬場の雪祭の時期であっても、6ヵ月先に、東京羽田から新千歳までの料金を予約しておいたら、当時、雪祭の最中の日に飛び込んで、その日の席がほしいといってお求めになる時の値段に比べれば何分の1ですむかもしれません。たぶんそうなるでしょう。そういう情報をどうやって入手するか、それが買手の情報化であり買手のお宅のなかに入っていくインターネットの端末を通じての情報とお考えいただいてよいでしょう。

 

 私はこれは交通運賃に限ったことはないと思っております。そのうちにもっともっとそれが広がっていく、すなわち変動料金制、つまり、時給によって料金の水準がかわるという時代が必ずくる。またそういう時代がくればくるほど、選択の幅が拡がり、かつまた安いコストで充実した生活を営むことができるに違いない。それは情報を活用する方に認められている特権とお考えいただいてよいでしょう。

 

 となりましたら、どなたでも、ご家庭にコンピュータの端末をインターネットのなかに組み込む形でセットされるだけではない、それを利用して旅行に出る時も、一体いつごろ旅行に出ればいちばん安い料金で、飛行機の便が、新幹線が予約できるかどうかがはっきり浮かび上がってまいりましょう。それを活用するということが、すなわち、買手、消費者の情報化であると申し上げてよいでしょう。

 

 これは大変によいことでございます。となりましたら、コンピュータの端末を動かす技術、これに習熟するのは当たり前でありまして、また習熟することが即生活の内容の向上と選択の幅の拡大であるとすれば、皆様方、必死になって端末を動かすためのノウハウを身につけようとご努力になるに違いありません。別に誰かに教えられてどうしてもやらなければならないなどという強制は必要がありません。財布の中身との相談でありますから、財布の中身をできるだけ生活を高度にしているにもかかわらず、中身を減らなさいですむ方法があれば、皆様方、喜んでそうなさるでしょう。

 

 これは大変、国民全体の生活を向上させるだけではない、国民全体にきわめて選択の幅を拡げていく最も有効適切な方策、これがこれから21世紀においてはきわめて早い時期に、日本のみならず、世界全体に拡がっていくものと私は確信しております。これが情報化社会であります。

 

 また、まちづくりにあたっても、この考え方、この流れをどこまで折り込んでいくかということが、これから地方行政を担当しておられる、それこそ市長さん方の第一の仕事になりましょう。

 

 また同時に、こうした情報のネットワークをそれぞれのまち(街・町)に整備していくか。それを通じて、例えば生涯学習の教材にしても、これもコンピュータのネットワークを通じて次々に提供できるという方策をいくらでも講ずることができるだけではありません。

 

 例えば、病気になりましても、おそらく症状について情報をコンピュータのネットワークを通じて、地域の医療機関の情報センターに送り込んでいくと、そのデータを見てお医者さんが正確に判断する十分診断の材料になり得る時代がくると私は思っております。またそういう時代は、決して遠い、遠い将来ではありません。私はおそらく、次のこのサミットが5年後に開かれるとするならば、その時点でかなり具体的な姿をとって皆様方の前に実態が明らかになると確信をしております。必ずそうなるでしょう。非常に変化は早いのです。

 

 また、同時に、これによっていろいろな情報が皆様方の生活にプラスになる材料を提供するだけではありません。生活を営む上に必要な選択、例えばいまものを買うべきか、いまこういうサービスを購入すべきなのか、等々の判断を正確に下すために最も大切な、いわゆる判断の材料、それに必要な情報を、それこそ無限にかつまた限りなく多種多様に入手することによって、そこから正確な判断と誤らない結論を引き出すことが可能であると私は見ております。

 

 例えばの話でございます。最近、ご存じでしょう。テレビを見ておりましても、まとまったお金の退職金をいただいたと。これをどういう形で運用するならば、すなわち投資対象をどういうものに選択するならば、最も安全ですなわち元本が目減りことなく、有利な、すなわち利息があるいは利益が確保できるかという金融商品の選択、これもテレビの画像を通じて、次々にいまや各家庭にまで入り込む時代がまいりました。これがもっともっと高度化いたしまして、例えば外貨預金をするならばどの外貨、米ドルかドイツ・マルクかイギリス・ポンドかあるいはまたオーストラリア・ドルか、どれをいつごろどの水準で放出するのがいちばんプラスなのか、それは。いま持っている外貨をこの水準で売ったら、先行き、もう一度より安い相場で買い戻すチャンスがあり得るかどうか、こういう判断を、今度は、それこそコンピュータのネットワークを通じてそうした情報の提供量を支払って、すなわち皆様方ご存じでしょう、NTTでやっておられますQ2 であります。あのQ2 は一種の情報化、情報の伝達のネットワークの前触れでありまして、これをもっと高度化し、かつまた詳細な情報を提供してくれるネットワークとして活用する第一歩と申し上げてよいでしょう。こういうものが次々に誕生してくるに違いない。またそこに新しいビジネスが生まれてくるに違いない。

 

 また、そうしたご努力を積極的に展開していくということが、金融資産の運用において大きいプラスにつながっていく。またそのためにこそ、正確な情報を大量に集めて、その情報がなにを意味しているか、その背景にある経済情勢の実態を分析する専門家の力を借りながら、新しい金融商品への投資のチャンスあるいはまた撤収の機会を正確につかむということが必ず可能になると私はそう思っております。

 

 また、そうした情報のネットワークをどのように構築していくか。それは、単に政府すなわち国家全体の課題というだけではございません。それぞれの地域、地域、若干ずつ違いはございましょう。その地域ごとにそうしたネットワークをどういう形で組んでいけばいいのか。それは単に、情報を提供する情報提供会社あるいはプロバイダーといわれるインターネットのいわゆるオペレーター達の仕事だけではありません。それこそ地方自治体の大きな課題の一つになってきたと申し上げてよいでしょう。

 

 まちづくりを情報化社会を前提に進めていこうといたしましたら、これまた多くの課題が生まれてまいります。その第1は、いわゆる情報のネットワークをどういう形で構成するのか。もっと端的な表現を使いましたら、例えば、直下型の地震が参りましても、情報を伝達するためのネットワーク、電線あるいは光ファイバーというものを地下に収蔵しておきましたら、被害はほとんどありません。しかしこれが電柱を立てて空中を引っ張っていくいわゆる架線という形をとりましたら、被害がきわめて大きなものになることはよくご存じの通りでございます。ということは、こうした情報のネットワークを支えていく電線、ケーブルの類を、今度は共同溝をつくることによって、地下に収納するというシステムが必要になるでしょう。

 

 またそのために、いろいろな新しいノウハウもございます。例えば光ファイバーを各ご家庭のなかに持ち込むための、いわば情報のネットワークのシステムとしてガス管を活用するという方法はないかと。あるガス会社が、そうした方式の技術の研究開発に非常に努力をしております。ガス管に、ちょうど直径で5ミリくらいの小さなロボットを使いまして、ロボット使いまして、光ファイバーを引っ張って、各ご家庭のところまでガス管を通じて光ファイバーをつないでいくことができるかできないか、こういう研究がかなり具体的に進んでおります。これも一つの方法でしょう。こういう新しい方式を次々にお考えいただく と同時に、これはその地域全体に普及させていくという仕事が、いわば情報化時代のまちづくりの大きな柱の一つになっていると申し上げてよいでしょう。

 

 皆様方、これからはこうしたネットワーク、これはインフラでございます、こうした社会資本を構成していくネットワークを建設するための、それこそ公共事業投資というものも、いままでとは違った発想であるいはまたまったく新しい視点で組み換えていかなければならない時代が、いまや始まろうとしていると申し上げてよいでしょう。それはなにも経済界の問題だけではありません。地域住民の課題でもございます。またその地域の住民に最大限のメリットを保障をする、生活上の便益を提供する行政の役割でもございましょう。皆様、これがこれからの21世紀の情報化時代であります。これを皆様方の生活につなげていくための、それこそ基盤づくり、これが行政に課せられた新しい課題と申し上げてよいでしょう。

 

 この県南5市の『情報のネットワーク、心の計画』これが一段の成長と発展を必ず実現するに違いない。またそれが引いてはこの地域に住まいの皆様方90万人の人々にとって、きわめて新しい同時にまた豊かな生活を提供してくれる第一歩につながっていくに違いない。私はこの県南ごとしの『心の計画』おそらく21世紀、あまり遠くない時期に、こういう形で90万人の住民の方々に、きわめて大きい同時にまたいままで考えられたことのないような便益を提供してくれる基盤になるに違いない。このサミットが、そのための第一歩につながってくれるということが、皆様方90万の人々にとって極めて大きいプラスになる。その意味では、本日のサミットはまさしく画期的な意義を持つに違いないと確信するものでございます。

 

 皆様方、これから情報化社会であります。それがすべての経済活動だけではありません。個人の生活にも決定的な影響を及ぼすことはすでに申し上げました。そのなかで、まちづくりのこうした視点で、改めてもう一度見直していくということが強く求められているという時代にあり、本日のサミットはその第一歩を開くに違いない。改めて私の確信を申し上げ、情報化社会とまちづくりとはこういうものだと皆様方に申し上げることにしたいと思います。

 

 御静聴ありがとうございました。

 

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